『ヘヴィネス求道の軌跡の総決算』
プロデューサーがボブ・ロックからリック・ルービンに変わり、あのチリチリしたスラッシュの音が帰ってきた。カークが前作の鬱憤を晴らすかのようにソロを弾きまくり、今まで脱ぎすてたメタリカらしさを再び身にまとった感がある。何よりもイギリス的な哀愁が再びサウンドに宿ったのが嬉しい。だが以前と全く同じであるはずがなく、結果としてこれまでのメタリカの音楽性の総決算的サウンドとなった。1.That Was Just Your Lifeは、「初めて聞くのに懐かしい」メタリカらしい名曲。弾きまくるソロや、ツイン・ギターの美しいソロ、ジャクジャクと十六分で刻むリフ等に感涙。グルーヴィーな3.Broken, Beat and Scarredも、今まで身につけた音楽性を投入しつつ、それを高い完成度へと結実させた名曲。ファーストシングル4.The Day That Never Comesは、文句なしの美しいバラード曲。壮絶で唐突な終わりもいい。5.All Nightmare Longのスラッシーなドラミング、リフといい、途中の展開のリフといい、実にかっこいい名曲。7.The Unforgiven IIIは、メロディーの美しさ、既に歌心を十全に表現できるヴォーカルと、いうことなしの美曲。これまでメタリカは幾多の音楽性の変遷を経てきたが、最新作を聴き改めて一貫性も感じた。彼らの軌跡は、飽くことなきヘヴィネスの求道、という一点において、寸分のぶれもなかった、と思う。重さ、速さ、曲のクオリティー等、2,3,4枚目を彷彿とさせる、傑作アルバムだ。